グアムのタクシー vo.3

初回で、トミーさんというタクシードライバーさんとのエピソードをご紹介させていただきましたが、もう一人、印象に残るタクシードライバーさんがいました。お名前は聞き忘れてしまったのですが、トミーさんとは違い、少しご年配の方でした。正に『いぶし銀』のような接客をされていたので、最終回に登場していただきたいと思います。

 

写真は、オンワードビーチリゾートのエントランス前です。ここはビーチも近く、ミクロネシア最大級のウォーターパークがあることでも有名です。私たちもこ の施設を利用しました。水のアクティビティーを楽しみ、移動のためタクシーを手配してもらい、乗り込もうとしたその時、ご年配のドライバーさんが、「ちょっと 待って」という感じで私たちを制しました。

何かと思い訊ねたのですが、どうも服装が気になったらしく、はいているハーフパンツを指さして、「それ、水着じやない?」と、訊いてきました。確かに数十分前までは水着でしたが、濡れねずみのままタクシーを利用することなど、もってのほか、マナーは守ります。「いいえ、いいえ、違います。何なら触ってみてくださいよ」私は自分のハーフパンツの裾を、ドライバーさんに向けました。

「うん、まぁ、兄ちゃんのは大丈夫そうだな」という顔をしたお父さん(そんな感じに見えたので、ここでは親しみを込めてそう呼びます)は、「そっちの彼のはどうだい?」と、他のメンバーのハーフパンツに目を向けました。一人はなぜか裸足でしたが、皆、衣服は濡れてません。「お父さん、大丈夫ですよ。皆、乾いています」ジェスチャーも交えてそう伝え、安心させようとしました。お父さんはニヤリと笑い、首を横に振り、やにわにトランクから毛布のようなものを出して、シートに敷き始めました。

 

海に囲まれた常夏の島ならではのこと、お父さんにしてみれば、至極、当然のことかもしれません。ただ、次に利用されるお客様のことを考えて、今できる最善のことを仏頂面でなく、笑顔で行うお父さんに私は好感をもちました。人情の機微を敏感に察知し、臨機応変に対応する・・・国は違えど、仕事の肝に国境はないんだと、改めて感じた瞬間でもありました。

私は助手席に座るのが好きです。それは海外でも変わりません。今回もご多分にもれず、お父さんの横に座りました。車内であるものが気になっていたので、どうしても訊いてみたくなりました。私の英語はブロークンにも程がありますが、思ったことは訊かずにはいられません。気になるものとは・・・これです。

お守りです。日本のものを大切にしてくれている気持ちが嬉しく、「これは日本のお守りですよ」と伝えました。お父さんは、当然、知っていたと思いますが、そこは優しさで、「本当?日本人のお客さんがプレゼントしてくれたんだよ」と返してくれました。「知ってるよ」という答えだったら、そこで会話は終わってしまいます。

それは、お守りの贈り主と同じ日本人の気持ちを尊重してくれたことに他なりません。この辺りが、『いぶし銀』の接客だと思います。独断ではありますが、グアム滞在中・最優秀タクシードライバーとして、トミーさんと共にダブル受賞していただきたいと思います。

東京オリンピックを控えた今、きめ細かい接客に定評のある日本のタクシードライバーが、真骨頂を発揮する時だと思います。

 

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グアムのタクシー vo.2

前回はグアムのタクシーの基本情報と、今取材時の最優秀ドライバーといってよい、トミーさんの話をしました。世界中のどこにでもあるタクシーですが、所変われば何とやらで、国によって料金、接客に違いがあることは、大変に興味深いことです。さほど、渡航経験があるわけではありませんが、いくつかの国を訪問し、その国のタクシーを利用して思ったことがあります。あくまで私見ですが、日本のタクシーは、車の手入れが行き届いているということです。

 

誤解しないでいただきたいのは、グアムのタクシーが、そうではないと言っているのではありません。むしろ、きれいに手入れされている方だと思います。次に乗車されるお客様のことを思い、シートのことを殊更に気にかけるなど、きめ細かい接客を心がけるドライバーさんもいました。(次回で紹介予定)このようなことは、海外では決して当たり前のことではないと思います。ですが、日本ではあまり見かけない、あるものを見つけてしまいました。それは・・・

 

 

 

 

 

 

 

これです。実際、海外ではよく見かける光景です。日本の専売特許のように言われている「モッタイナイ」を実践し、経費削減のためにやっているんだと言われたら、返す言葉はないのですが、恐らくは見てくれは二の次なのでしょう。ここのところは、日本のタクシーは、胸を張ってよいのではないでしょうか。

『お客様は、時間を買ってくださっている』というのは、私の尊敬するタクシードライバーの言葉ですが、であるならば、『手入れの行き届いた車に乗っている』という気分のよさも、ある意味でお客様は買ってくださっていると思います。

ただ、今回の滞在中、接客で嫌な思いをしたことは皆無でした。そこは、とても重要だと思います。見てくれどうこうは、各々の国の考え方の違いですし、そこも含めて、異文化に触れることを楽しめばよいのではないでしょうか。ただ、それが安全性に関わることであった場合、話は別です。そこのところは、生命線でもあります。

次回は、一人のタクシードライバーさんにスポットを当てます。

 

 

 

 

 

 

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グアムのタクシー vo.1

年一回の恒例になっております、海外のタクシー事情についてご紹介させていただきます。今回は、常夏の楽園・グアムです。日本との時差は、約1時間。飛行機で3時間半くらいで行けますから、手軽に行ける外国の筆頭でもあります。日本人にも馴染みのあるグアムのタクシー事情を取材してきましたので、ご覧いただきたいと思います。

 

カラフルでかわいいですね。ホテルなどのエントランスに設えてあります。大抵、求めに応じて、タクシーを手配してくれるおじさんが、ポツンといます。宿泊していたホテルでも、「タクシー使う?」という感じで何度か声をかけられたのですが、ホテルからはシャトルバスを使う機会が多かったので、断ることが多かったです。もちろん、バスばかり使っていたわけではありません。今回の取材は、流しのタクシーに乗ることもテーマの一つだったので、施設から利用する機会がなかっただけです。おじさん、ごめんなさい。通常は、この常駐所を使った方が、安心ですし、便利だと思います。

 

なんか、カッコいいですねぇ。日本車には違いないのですが、カラーリングの違いでしょうか、異国情緒を感じます。死亡遊戯・トラックスーツのポップ版(分からない方は、無視してください)みたいで、個人的には好きです。先に日本車と書きましたが、グアムを走っている車の70%位は、日本車なんだそうです。ちょっと、嬉しいですね。

ちなみにメーターは、お客様が乗ってからゼロにし、基本料金にするように法律で定められているそうですが、きちんとチェックした方がよろしいかと思います。ドライバーさんの顔写真とID番号は、車内のお客様に見える位置に表示することになっています。ご心配なら、ID番号を控えておいてもよいかもしれません。顔写真、ID番号の表示のないタクシーを利用するのは、避けましょう。

 

基本料金は、2ドル40セント(約260円/2014/10/28現在)他料金は、最初の1マイル→約1.8キロは4ドル(約430円、/2014/10/28現在)0.25マイル→約460メートル毎に80セント(約86円/2014/10/28現在)、待ち時間2分・80セント、荷物代・1ドル((約108円/2014/10/28現在)となっております。荷物代というのは、ドライバーさんのサポートが必要な場合。チップは、料金の10%か15%程度が目安とされています。

ちなみに、グアムでは基本的に流しのタクシーは、ほとんど無いということを聞いていました。今回は取材のため、検証する必要がありましたので、Tギャラリア・グアムby DFS(免税店)を出て、少し歩いたところからプレミアムアウトレットまで、タクシーを利用することにしました。

道行くタクシーに「乗せてください」という意思表示をしたのですが、なかなか止まってくれませんでした。しばらくして、反対車線を走っているタクシーのドライバーさんと目が合いました。「乗ります?」というアイコンタクトは、日本のドライバーのそれと同じです。仕事柄、タクシードライバーと話す機会が多い私は、「反対車線側を歩いている人も、気にかける」という鉄則を遵守している、そのドライバーに好感をいだきました。

トミーさんという若い方でしたが、降り際に名刺をもらいました。そこには日本語で『入り口で、トミーを呼んでください』とありました。意味はよく分かりませんが、気持ちは伝わってきます。目的地までの道中、おいしい店の案内も日本語でしてくれまたし、運転・接客マナーも申し分ないものでした。国は違えど、このようなタクシードライバーがいることに感動しましたし、よい出会いだったと思います。

次回に続きます。

 

 

 

 

 

 

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下田大気さんの本

カリスマドライバー・下田大気さんの二冊目の著書『タクシー運転手になって人生大逆転』が、この度、上梓されました。下田さんとは定期的にお会いする機会がありますが、いつも思うことは、「変わらない人だな」ということです。

もちろん、悪い意味ではありません。感情の起伏のことを言っています。このことは、タクシードライバー、いえ、サービス業に携わる人にとって、必須の要素なのではないでしょうか。ある時は、機嫌よく、ある時は不機嫌では、一期一会の接客が主になるタクシードライバーの仕事を行う上では致命的になります。

下田さんの場合、生来の性格なのか、身についているものなのか、いつお会いしても穏やかです。この辺りは、私も見習わなくてはいけません。感情の起伏こそ激しくはありませんが、いつも穏やかとは言えないからです。

何回かお会いしていて、気づいたことがあります。「チャンスですね」とか、「やってみるべきですね」とか、前向きな発言が多いということです。下田さんに限らず、仕事が出来る人は、一様にこの傾向が強いと思います。

『言霊』という言葉があります。そのまま訳すと【言葉にあると信じられた呪力】ということになりますが、呪力ではなく出力という言葉に置き換えたいですね。【外部へエネルギーを送り出すこと】

自らだけではなく、周りの人にも影響を与えるという意味で、言葉には不思議な力があると思います。さて、弊社では、カリスマドライバー・下田大気さんの無料相談会を月に2回、行っています。ご興味の有る方は、下記からお気軽にお問い合わせください。お待ちしております。

http://karisuma-taxi.com/

 

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心のスキル

この仕事をやっていると、毎日、様々な方とお話をさせていただく機会があります。今日、お会いした方が、こんなことを言っていました。「私の会社の同僚には、大変に優秀な人たちがいて、新たな資格を習得することや、新しい知識を吸収することに心血を注いでいます。私も触発されますし、素晴らしいことだとは思うのですが、忘れてはいけないのが、心のスキルだと思っています。技術や知識は、努力することで会得できますが、心だけは、自分が気づかないと、いつまで経っても空っぽのままですからね」

スキル【訓練によって得られる特殊な技能や技術】とあります。職種が多様化した現代、欠くべからざるものです。私のような職業紹介の仕事ももちろんですが、タクシーの仕事を行うにあたっても、二種免許や地理試験の取得など、必ず関わってくるワードでもあります。スキルアップすることによって、仕事の幅が広がり、効率的に行え、ひいては、顧客の満足に繋がる・・・橋頭堡と言ってもよい大切なものです。

向上心のない人間に、明るい未来は望めません。そのような意味では、スキルアップに向けて、日々邁進していくのが、成功への近道であるといえます。ただし、それのみに主眼を置きすぎて、いろはの『い』である大切なことを見落としてしまっては、本末転倒です。例えば、タクシーの仕事の場合、東京特別区などは、地理試験にパスすることが必須の条件です。現在は、合格率が40%くらいですから、なかなか狭き門の国家資格です。

合格した場合、都内の主要な幹線道路、施設等の基本的な知識が身につきます。正にスキルアップするわけです。机上の学習とはいえ、実際の業務でも役立たないわけではありません。例えば、お客様に「○○へ行ってください」と言われ場合、どこを通っていくのが、最短ルートかなど、想定できます。それで、無事に到着地に行けたら、言うことはありません。ただし、全てがそのように単純明快にいくとも限りません。理由は、『人』をお乗せしているからです。

現役の方に直接、聴いた話です。その方は、タクシードライバー歴は、まだ浅いのですが、前職が配送関係の仕事だったので、都内の道は、熟知していました。お客様から目的地を告げられた際、いく通りのものルートを、頭の中に思い描くことができたそうです。一時期、地図と首っ引きで、都内を縦横無尽に走っていた成果でしょう。ある意味で、その方には、その方面でのスキルがありました。

都内の道に抜かりなしという感じで、自信満々で、タクシーの業務に就いたそうです。ある時、お客様が乗ってこられて、行き先を告げました。どう行くのが最短ルートか、瞬時に頭の中でシュミレートし、意気揚々と車を走らせたそうです。果たして、予定より早い所要時間で、目的地に着いたので、お客様はざぞ満足だろうと、後部座席を見たら、顔が曇っていたそうです。理由を訊くと、「どうして、この道を通ったの。この方角は、今日は鬼門だから避けたかったのに」という意外な答えでした。

その方は占いに凝っていて、普段からことさらに、方位・方角を気にしているとのことでした。笑い話のようですが、本当のことです。これなどは、冒頭の話に出た方の言葉を借りれば、『心のスキル』があれば、防げたことなのではないでしょうか。なまじ、知識としてのスキルが邪魔をして、ニーズに気づかなかったという典型的な例です。「占いに凝っているなんて、知るわけないじゃん」という声も聞こえてきます。確かに、その通りですし、極端な例かもしれません。ただし、会話の基本中の基本であることを意識すれば、回避できるのではないでしょうか。

それは、つまり『お訊すること』です。スキルがあるなら、尚更、「このようなルートもございますが、いかが致しましょう?」と、提案もできるはずです。今回のこのドライバーさんは、知識としてのスキルに溺れてしまったわけです。そのことに気づいた後、本来、持っていたスキルにプラスアルファされ、その方の能力は倍加しました。

今回のドライバーさんに限らず、プロといえる人こそ、頭でっかちになり、本当に大切なことを見失ってしまうことが、往々にしてあるようです。いくら知識があっても、人の気持ちに応えられない、人の気持ちを踏みにじる、机上の空論のようなスキルに、一体、何の意味があるでしょう。『心のスキル』とは、つまり、相手を思いやる気持ちです。もともと、目一杯、充電されている人もいますが、そうでない人、気づいた人は、充電すればよいのです。それは、つまり想像力を働かせることです。「この人、いま、○○かもしれない」「こうだったら、この人にとってベストかもしれない」などなど。必ずや、ある局面で活かされるはずです。

お客様との距離が近いタクシーの仕事は、そんな気づきの宝庫かもそれません。

 

 

 

 

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タクシードライバー無名人語録4

今日は、祝日・海の日です。海の日・・・と言われても、正直しっくりきません。多分に年代が関係しているのでしょう。つくづく、自分は昭和の人間だと思います。とはいえ、激動の昭和を生きてこられた諸先輩方と比較すると、私などはまだまだヒヨッコです。そこで今回は、昭和の時代をタクシーの仕事を通して、かけ抜けてきたタクシードライバーさんの語録を紹介したいと思います。もう引退された方もいますが、やっていた方ならではの含蓄のある言葉の数々をお楽しみください。

「有名人なんて、そりゃ数えきれないほど乗せたよ。でも、誰がどうだなんてここでは言わない。墓場まで持っていくんだ。」

【一見、何のことかわかりませんね。ですが、心あたりのあるドライバーさんには耳が痛い、プロとしての矜持を感じる言葉です。つまり、守秘義務は守りますよってこと。知り得た情報を守ることは、プロとして、最低限のマナーです。このことは、時代を越えて、原理・原則として欠くべからざるものと言えます。はっきり言って、現在は軽薄な言動が目立つプロもいないではありません。それを考えると重みのある言葉です】

「昔はさ、ねずみ色や、こげ茶色が多かったの。今はさ、桃色か橙色だよ。文句言う奴もいるけど。でもね、若い人が変えてってくれるんだからさ、そりゃ、ありがたいことなんだよ」

【23区のある特定の地域のことを言っています。どこだかわかる人は、相当に勘が鋭い人です。正解は・・・秋葉原です。昔は電化製品に関する専門的な部品を扱っている店が、軒を連ねていました。電子管なら電子管、ソケットならソケットだけを売っていた、市場のような雰囲気だったのです。そこには、業者も買いに来ていましたし、自分でラジオやらを作っている人達も大勢来ていました。当然のことながら男子率は90%を超えます。自ずと服の色は、ねずみ色・・・(これも古い言い方ですが、グレーのこと)やこげ茶色になります。そこから時を経て、現在は、パステルカラーになっていることは、周知の事実です。この方は、人が街を変え、人が街を運用していくものであることを感慨深く語っているわけです】

「昔はカーナビなんてののは、もちろんありません。今は大変に便利になりました。ですが、我々は画面上のまっ平な道を走っているのではありません。人が横切り、車が縦横無尽に走る立体を走っているんです。そこんとこ、間違えちゃいけませんね」

【カーナビは便利です。ですが、絶対ではありません。お使いになった方ならお分かりでしょうが、必ずしも最短経路を示すわけではありませんし、機種によってはとんでもないルートを示す場合があります。そして、もう一つ。原則があります。お客様はお客様の通りたい道があるかもしれませんし、そうかもしれないという想像力を、プロであるなら働かせるべきです。ここでは、自分の見て、感じたものを大切にしなさいよ、便利なものがあっても過信しちゃいけないよということを言っています】

いかがでしたか。タクシーを媒介に、人と街と時代を見つめてきた方ならではの、深みのある言葉もあったのではないでしょうか。タクシーの仕事を長く続けてきた方々とお話するのは、本当に楽しいです。接客のプロであり、会話のプロなのですから、もっともな話なのですが、多くのものを見聞きしてこられたであろうその佇まいには、歴史の生き証人としての威厳しら感じます。

タクシーは、時代も送迎しているのですね。

 

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タクシードライバー無名人語録3

暑い日が続いております。まだ、梅雨の真っ只中のはずなんですが、今日は快晴です。先日、台風8号が知らないうちに関東を通過していました。かなりの規模のもの・・・と、TVのお天気キャスターに脅かされていたので、拍子抜けしたのですが、甚大な被害のあった地域のことを考えると、そんなことを言っていられません。天災が相手だと人間は無力なものだとつくづく思います。さて、今回のテーマは、天候です。お天気とタクシーの仕事は切っても切り離せないもの。気分だけでなく、売り上げも左右するのが、お天道様なのです。

「お着物を召しているお客様がいらっしゃるでしょう。家の玄関のかなり手前でお降りになると言われた場合は、お召し物が雨に濡れますからと言って、玄関まで車を着けて差し上げるんです。サービスもそうですけど、距離も伸びて一石二鳥でしょう」

【距離がなんたらと言っていますが、このドライバーさんの場合は,照れ隠しです。実際、数メートル走ったからといって、それほど売り上げが変わるわけではありません。もちろん、それを疎かにしてはいけませんが、ここで言いたいことは、お召し物が雨で濡れないようにという細やかな接遇の気持ちを表に出していることです。黙ってそうすることもできるでしょうが、プロフェッショナルある以上、アピールも大切な要素。お客様によっては、感激されて、そのドライバーさん、ひいてはその会社のファンになることでしょう】

「色んな商売がある。だから、雨の日でも手放しで喜ぶようなことを言わないことだよ」

【ビジネスの場で、タブーとされるのは、政治の話・宗教の話だと言われています。誰が言い始めたかは定かではありませんが、これに野球の話が加わることもあります。言わずもがな・・・な気がしますが、人の立場は、一緒じゃないよということ。天気の悪い日は、タクシー利用のお客様が増えるので、ドライバーさんとしてはウハウハです。ついつい、乗車されたお客様にも上機嫌な様子で接してしまうかもしれません。ですが、乗車された方が、例えば海の家の人だったらどうでしょう。これから、親族の結婚式に向かう人だったらどうでしょう・・・ちょっと極端な例でしたが、先のドライバーさんは、人の気持ちを傷つけないためには、想像力が必要なんだよということを言っています。日常生活にも当てはまることですね】

「よく人の行動パターンを読むといいますが、僕は自分の行動パターンを読むんです。僕ならどこで雨宿りをするかなって」

【雨が降った時に人の集まる場所ってありますね。駅であったり、ある施設だったり、地域や時間帯によっても違いはあるかと思います。先のドライバーさんの前職は外回りの営業職でした。営業エリアは23区全般。電車で移動されていたので、天候が荒れた時にどのような動きをするのか、ご自分がいちばん熟知していました。全ての人に当てはまる言葉ではありませんが、人によって違う経験則は、それぞれの局面で、違う活かし方があるということです】

ワールドカップ・ブラジル大会も終わりました。いよいよ、来るべき真夏に備えなければいけません。最近、仲間の一人が熱中症でダウンしました。日照りのよい日に表にいたらしいのですが、その時ではなく、後から具合の悪さが襲ってきたようです。炎天下の中、歩かなければいけない時は、マメに水分補給をすることが大切です。そして、キツいな・・・と思ったら、タクシーを利用するとよいでしょう。無理して倒れたりしたら、その人にとって、かけがえのない時間を失うことになりますものね。

はっきり、言います。タクシーは、人助けツールでもあるのです。

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実践躬行

先日、ある現役のタクシードライバーさんとお話をしました。弊社からの紹介で、企業に入社された方です。乗務してから正味1年位しか経っていないのですが、その方の営業成績は、社内でも常にトップクラスです。

「経験もまだ十分ではないのに、どうして?」と、思われる方もいるかもしれませんが、そういったことは往々にしてあることです。理由として、その方に『逃げ』の姿勢が見られにことが挙げられます。新人だから、あるいは車のランクが低いからといって、自分で決めつけて、行くべきエリアに行かないということがないのです。

これはかなり重要な要素です。その方は、『なか』で動きます。「なぁんだ、そんな当たり前のこと」と、思う方もいるでしょう。法則はいつだってシンプル。ただ、その当たり前のことを、できないのではなくて、やらない方が多いのだと思います。『なか』で動くことは、私が訪問させていただく、ほぼ全ての企業のできる方が言っている鉄則です。ちなみに、『なか』というのは、色んな意味がありますが、ここでは都心のことを言います。

せっかく、日本一忙しくて、日本一利用する方の多いエリアに行けるのに、わざわざ、その『なか』を外して、端の方で動く。できる方にしたら、理解に苦しむと言います。とはいえ、できない方にも言い分があるようで、要は「怖い」んだそうです。わからないでもありません。23区の『なか』は、同じような名称の建物もたくさん在りますし、生き馬の目を抜く東京なんて言われるくらいですから、やさしいお客様ばかりではありません。

ただ、先のドライバーさんは、「だから、やめておこう」という発想が無いのです。発想が無い・・・というのは語弊がありますね、葛藤はあると思います。ですが、それ以上に「だから、なに?」という気持ちの方が強いのだと思います。ある意味で、この仕事は図太さが大切なのではないでしょうか。

ある会社の管理者の方に、稼ぐための秘訣を訊いた時、こんな風に答えていました。「せっかく利用してくださるお客様のいらっしゃる市場があるのですから、そこに行かないで、どこに行くんですか。必要なのは、勇気と勢いですよ」地理の知識などは後からついてくるもの。むしろ、スタートしたばかりの新人さんだからこそ、訊けることもあるでしょうし、「失敗してなんぼ!なにせ新人なんだから」と、よい意味で開き直ることが大切なのではないでしょうか。

先のドライバーさんは、そろそろ黒塗りの車に乗ることができるはずです。最初の頃は、ずいぶんお客様にお叱りを受けたと言っていました。ただ、その方は前向きに捉えるということを忘れませんでした。いえ、新人であることをよい意味で、巧みに利用したと言った方がよいでしょうか。

ある大企業のトップの方が、「素人の発想こそ最強である」という主旨のことを言っていたことを思い出します。経験者は知識や固定観念がストッパーになり、柔軟な発想の妨げになることがあるそうです。片や素人は、知らないだけにそういったものに囚われることがないので、経験者が思いもよらないことをやってのけ、成功するパターンが多々あるということです。

先のドライバーさんも、現在、乗っている車のグレードは正直、あまり良くありませんが、銀座などにどんどん入っていくと言っていました。中には車を選ぶお客様もいらっしゃるでしょう。ただ、タイミングが合えば、利用する方も当然いらっしゃるわけです。固定観念に囚われて、「オレはこんな車だから銀座では・・・」と考えて、逡巡する時間の方を損失と考えるべきではないでしょうか。

「四の五の言わず、まずはやってみよう!」この姿勢が肝要なんだと、各社のトップ・ドライバーさんと話をしていて、つくづく思います。ちなみに先のドライバーさんは、コンスタントに月90万円近くやっています。これ以上の証左があるでしょうか。

 

 

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おいしい店

私用で、香川県は高松市に行ってまいりました。ご存知のように讃岐うどんで有名な所です。うどんは普段、東京でも食べますが、これほどまでに違うものかと仰天しました。香川県出身の友人がことある毎に、「香川のうどんは」と言っていたので、「どれほどのもんじゃい!」という気持ちで地元の方がよく行く店に行ったのですが、まぁ~レベルが違いましたね。コシがあるとか、ダシがどうとか、そんな言い方自体、稚拙に聞こえるほど、完成されたものでした。

私は地方に行った時など、可能な限りタクシーを利用します。取材心ももちろんあるのですが、地元の方の声をダイレクトに聞きたいというのが、その理由です。今回もご年配のドライバーさんと話をしました。おいしい店、名所、香川県出身の有名人の話など、取留めのない世間話をしたのですが、素朴な方言の響きがとても素敵でした。

地方に行った際、なるべくタクシーを利用されることをお勧めします。業界の回し者のように思われても困るのですが、そのような意味ではなく、旅が色濃いものになるからです。そして、おいしい店、お勧めスポットなど、どんどん訊かれることをお勧めします。

たまに、「タクシードライバーさんはおいしい店をよく知っているなんて言うけど、それはウソ。同じ所でしか食べていないし、結構、買って食べている人が多いみたい」と言う人がいます。確かに時間的な問題も、お財布の問題もありますから、毎回、有名グルメ・スポットという訳には行かないでしょう。ただし、当たり前の話ですが、タクシードライバーさんは、お客様の嗜好で動くこともあるわけです。それはつまり、食通の方をご案内する機会にも恵まれているということ。言い方を変えれば、タクシーの車内は食の情報の宝庫とも言えます。おいしい店を知らないはずがないのです。

 

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初めからできる人はいない

地方にお住まいの方で、上京してタクシーの仕事に就きたいという方がいらっしゃるかと思います。心配は、やはり地理のことでしょうか。ご存知ない方のために、ご説明させていただきますと、タクシーには営業エリアがあります。例えば東京では、東京都特別区・武三交通圏があります。東京23区と武蔵野市・三鷹市のことです。

東京23区と一口に言っても、端から端までずいぶんと距離がありますし、神奈川寄りか千葉寄りかによっても、また違ってきます。ただ、東京以外のエリアの方にお訊きしたいのですが、ご自分の住んでいる地域以外のことを、どれだけご存知でしょうか。もちろん、都道府県は面積も違いますので、一概には言えませんが、皆さん意外とご自分の住んでいる地域の、本当に近郊しか知らないのではないでしょうか。

仕事で行く、親戚・知り合いが住んでいるなど、何かしらの縁(えにし)がないと、それほど行く機会はないと思われます。東京も同じこと。東京生まれ・東京育ちの方も、城北エリアはよく知っていても、城南エリアになると、皆目見当がつかないということが、往々にしてあります。もちろん、生まれ育ちが東京であれば、おおよその見当はつくでしょうが、そんなことは後から理屈で勉強すればいい話です。

勇気は必要かと思います。自分の知らない土地でやるわけですから。でも、言葉の通じない外国ではありません。東京のベテランドライバーさんでも、本当に道がわからない時は、お客様にお訊きするといいます。問題は訊き方です。最初から道を知っていることに越したことはありませんが、そういう人のみでは、東京のタクシー会社は回らなくなってしまうでしょう。

私の知っているタクシードライバーさんで、地方から出てきて、コツコツと道を覚え、今では都内の道のエキスパートになっている人がいます。その人の最大の武器は、訊き方が上手なことです。謙虚さが大切だとも言っていました。人にものを教えるのは、大抵の場合、気持ちが良いものです。多少なりとも優越感に浸れます。その方は、お客様にお訊きしているようで、その実、お客様の気分も良くさせているのです。そして、そこで得た地理の情報をご自分の財産にしています。問題は訊き方です。慇懃無礼という言葉がありますが、それではいけません。心から「教えていただけませんでしょうか」という姿勢を見せることが肝要です。テクニックではなく、ハートですね。

色々書きましたが、これだけは言えます。『初めからできる人はいません』

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