異文化交流

シリーズで、タイのタクシーのことを話しました。普段とは違う世界に身を置く、またはそこに生きる人と接することで、自らを俯瞰して見ることの出来る貴重な体験だったと思います。

私は特に、『外国人と日本人の思考と習慣の違い』に興味があります。最近見たTV番組で、ある国の国民性として、気さくで会話好きであるということを取り上げていました。ご近所の方との立ち話に相当数の時間をかけたり、タクシードライバーさんが話好きだったりと、かなり興味深い内容でした。日本から嫁がれた奥様が、困惑している様子をカメラは映していましたが、むっつりしている国民性よりは、はるかにいいと個人的には思います。

その国のタクシードライバーさんの映像で、興味深かったのは、お客様がご自分一人にもかかわらず、助手席に座っていたことです。インタビューでも、「いつも助手席に座るよ。その方が話しやすいからね」と、言っていました。ドライバーさんと話をすることが前提なのですね。

以前、読んだ本の中にも、奥様と二人でインドに旅行に行った方が、自分だけ「お前はここだ」というニュアンスで助手席に座ることを勧められ、憤慨したということが書いてありました。後にドライバーさんのフレンドシップの表れであることが分かり、その文化の違いに驚いた様子でした。

日本では後部座席が満席で座れない、あるいは目上の方と隣席しないようにという理由以外で、助手席に座ることは、まず無いのではないでしょうか。私自身はタクシーを利用した際、助手席に座る派です。もちろん、一人の時は座りません。ですが、複数の時は後輩と同乗する時も率先して助手席に座ることがあります。理由は、ドライバーさんとコミュニケーションをとりたいからです。

仕事柄もあります。私の仕事は、タクシードライバーを目指す、または業界内で転職する方にタクシー会社を紹介することです。頻繁に企業訪問し、情報収集はしていますが、最前線で働いている方に話を聞かずに、説得力のある説明はできないと思っています。後部座席より助手席は、物理的な距離より、心の距離が近いような気がするのです。それは海外でも変わりません。

私は海外へ行く際、現地の言葉をある程度覚えていく習慣があります。『郷に入っては郷に従え』で、その国の方に敬意を払いたいというのが理由です。色んな場所で自分の言葉が通じるか否かを試すのですが、とりわけ、現地の方の息吹を感じられるという点で、タクシードライバーさんを話し相手にするのがベストだと考えています。

タイでは現地の方の乗車率90%の乗合ワゴン車で、助手席に座りました。約1時間の行程でしたが、車内のタイ人密度の高さからいって、その緊張感たるや通常タクシーの比ではありませんでした。しかも、

案の定、ドライバーさんがラジオで曲をかけた時、何やら話しかけてきました。「この曲、いいよね」的な響きでしたが、恥ずかしいことに私は即答できませんでした。簡単な言葉で意思を伝えることはできましたが、何を言われたのかが分かりません。これでは、本末転倒です。幸いなことに、もう一人助手席に座っていた現地の方が、代りに答えてくれました。

旅の恥はかき捨てと言いますが、その時は、せっかく話しかけてくれたのに返答できなかったことに、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。その後、「私は東京から来ました」と伝えたら、笑顔を返してくれ、和やかなムードになったので、どうにか事なきを得ました。一時は肝を冷やしましたが、カタコトながらも、異文化交流の醍醐味を味わうことができたのは収穫でした。東京五輪を控えた今、来日された方が、助手席にいきなり座ってきても、日本のタクシードライバーさん、どうか快く受け入れてください。

異国の文化に合わせてみることも、『おもてなし』の心の一つです。

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