勇退

77歳で廃業されたある個人タクシー事業者の家族からのお便りです。
43年目の決断として父への感謝と誇りが綴られており、ご紹介したいと思います。
ハンドル一つで家族を支え4人の子供を育てた56年のタクシー人生に終止符を打ちました。
今では個人タクシーを見かけることも多くなりましたが、戦後の高度成長期は個人タクシーはあこがれの職業で、試験に通るのも難関でした。
試験に通ったと喜んでいた両親のうれしそうな様子は、子ども心にも「すごいことなんだ」と脳裏に焼き付いています。
以来、家族写真の背景はいつも父のタクシーであり、年月とともに車が変わっても家族が増えてもそれは変わりませんでした。
家業を始めてから共に毎日、車の手入れをしてきた母を亡くした時、憔悴しきった父が最初にしたのはタクシーの整備でした。
持ち前の気合いと根性でがんばっていた父でしたが屋台骨である腰に徐々に負担をかけていたと思うと胸が詰まります。
「プロではなく職人だ」が口癖で、カーナビより東京の道に詳しい父のことを私たち家族は感謝を込めて誇りに思います。
だから個人タクシーは廃業ではなく、43年目で決断した勇退と呼びたい。              勇退した父と同業の方々へ感謝とエールを込めて書いたお便りになります。

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