ハートをがっちり

昨今、一頃より高い頻度で女性タクシードライバーを見かける機会が増えました。そもそも、『女性』とつけること自体、時代遅れもいいところかもしれませんが、まだまだ女性の進出が遅れている分野であることは否めません。

最近、ずいぶん前から女性ドライバーの積極採用を提唱していた、ある方とお話をする機会がありました。まだ圧倒的に男性ドライバーが多かった時代にです。ある会社にその方(以降、Aさんとします)が在籍していた時、代表の方に女性ドライバーの積極使用を進言したそうですが、その時は却下されたそうです。

女性を迎え入れるにあたって、ドレッシングルーム・トイレなど環境整備に時間やコストがかかることも理由の一つですが、それよりも、『女性が就く仕事ではない』という固定観念の方が、厳然としてあったと思います。そのような時代、Aさんは託児所の完備なども視野に入れ、考えていたようです。現在、導入している企業もありますので、正に先見の明があったのでしょうね。

Aさんが、ご自分の考えを実践に移したのは、次の職場ででした。若い女性タクシードライバーが、1人いらしたそうで、その女性(以降、B子さんとします)は、隔日勤務(1日おきの勤務)をしていました。事情があったのでしょう。稼がなければ!と言うB子さんに、Aさんは隔日勤務ではなく、ナイト(夜だけの勤務)をやったらどうかと提案しました。

B子さんは「夜だけなんて・・・」と消極的な様子だったそうですが、「隔日勤務でも、夜はやるでしょう。試しにやってみたら」と勧め、B子さんも納得してスタートしたそうです。ナイト勤務は、『昼とは景色が違うので分かりづらい』『酔客が多いので大変』『暗いので物騒』などの理由が挙げられ、女性なんてとんでもない!という見方が、その時代、一般的だったと聞きます。

しかし、Aさんには考えがありました。以下のことを、意識的に実践するようアドバイスしたそうです。『お化粧をきちんとすること』『服装も女性らしくすること(その会社は、女性の制服が特になかった)』『きめ細やかな接客をすること』です。フェミニストの糾弾を受けそうですが、これにはきちんとした意味があります。

Aさんは、『お客様のニーズに応える』という、接客業のいろはの『い』を実践するにあたって、至極当然のことを提案したに過ぎません。言うまでもなく、タクシー業務は接客業です。『安全に快適にお客様を目的地までご案内する』ことが大切なのは勿論ですが、その中の『快適に』の箇所に照準を合わせた場合、『どれだけ、そのような空間で過ごしていただけるか』という部分が肝になってくるかと思います。

誰が、爪の黒い不潔なドライバーの車に乗りたいでしょう。洋服がほころんでいる、だらしないドライバーと話したいでしょう。そうです。基本中の基本である身だしなみのことを説いているのです。プラス・アルファで、女性であることの特性を活かして、意識して、やってみましょうよということなのだと思います。

『快適な空間』とは、主観的なものです。人それぞれですが、そこに異性(異性でなくてもよいのですが)との楽しいおしゃべり、細やかな気くばりという付加価値が加われば、いかがでしょう。ただの移動ではなく、満ち足りた空間がそこに生まれるのではないでしょうか。

エピソードとして、このようなことがあったそうです。B子さんの接客のファンになったお客様は、友人と乗車した際、B子さんと少しでも話したいがために、ご自分がかなり遠回りになるコースになることも厭わなかったそうです。それも半端な遠回りではありません。県を跨いでのコースです。タクシー業務において、そのことが何を意味するかは、お察しの通りです。

B子さんは、月100万円の売上をコンスタントに上げたそうです。危惧されていた、ナイト勤務のデメリットも特に問題になるようなことはありませんでした。B子さんに、能力や適性があったのかもしれません。ですが、よほど邪な気持ちを持っている人でない限り、男性は女性ドライバーに対して、無理難題をふっかけてきたり、セクハラまがいのことをすることはないと、B子さんは言っていたそうです。何となく分かる気がします。男同士は、売り言葉に買い言葉で・・・なんてことが、往々にしてありますから。

『快適な空間』とは何でしょう。一概に言うことはできませんが、ヒントは自分の中にあるかと思います。自分だったら何が嬉しいだろう?ということです。私は男性ですので、例えば、髪を切ってもらったり、マッサージをしてもらう場合は、異性の方がよいです。あくまで、私の場合はです。スケベ根性丸出しじゃねぇか!と言われたら返す言葉もありませんが、会話もそれに含まれますので、心持ちの問題と言ってもいいかもしれません。

女性タクシードライバーの活躍に関しましては、今さら言うまでもありません。今回は女性にスポットをあてましたが、十人十色です。故事来歴に詳しいご年配のドライバー、語学に堪能な国際派のドライバー、話題が豊富な若いドライバーなど、それぞれの特性を活かしてよいはずです。要は、お客様のハートを掴めるかどうか・・・ですから。

 

 

 

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