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心のスキル

この仕事をやっていると、毎日、様々な方とお話をさせていただく機会があります。今日、お会いした方が、こんなことを言っていました。「私の会社の同僚には、大変に優秀な人たちがいて、新たな資格を習得することや、新しい知識を吸収することに心血を注いでいます。私も触発されますし、素晴らしいことだとは思うのですが、忘れてはいけないのが、心のスキルだと思っています。技術や知識は、努力することで会得できますが、心だけは、自分が気づかないと、いつまで経っても空っぽのままですからね」 スキル【訓練によって得られる特殊な技能や技術】とあります。職種が多様化した現代、欠くべからざるものです。私のような職業紹介の仕事ももちろんですが、タクシーの仕事を行うにあたっても、二種免許や地理試験の取得など、必ず関わってくるワードでもあります。スキルアップすることによって、仕事の幅が広がり、効率的に行え、ひいては、顧客の満足に繋がる・・・橋頭堡と言ってもよい大切なものです。 向上心のない人間に、明るい未来は望めません。そのような意味では、スキルアップに向けて、日々邁進していくのが、成功への近道であるといえます。ただし、それのみに主眼を置きすぎて、いろはの『い』である大切なことを見落としてしまっては、本末転倒です。例えば、タクシーの仕事の場合、東京特別区などは、地理試験にパスすることが必須の条件です。現在は、合格率が40%くらいですから、なかなか狭き門の国家資格です。 合格した場合、都内の主要な幹線道路、施設等の基本的な知識が身につきます。正にスキルアップするわけです。机上の学習とはいえ、実際の業務でも役立たないわけではありません。例えば、お客様に「○○へ行ってください」と言われ場合、どこを通っていくのが、最短ルートかなど、想定できます。それで、無事に到着地に行けたら、言うことはありません。ただし、全てがそのように単純明快にいくとも限りません。理由は、『人』をお乗せしているからです。 現役の方に直接、聴いた話です。その方は、タクシードライバー歴は、まだ浅いのですが、前職が配送関係の仕事だったので、都内の道は、熟知していました。お客様から目的地を告げられた際、いく通りのものルートを、頭の中に思い描くことができたそうです。一時期、地図と首っ引きで、都内を縦横無尽に走っていた成果でしょう。ある意味で、その方には、その方面でのスキルがありました。 都内の道に抜かりなしという感じで、自信満々で、タクシーの業務に就いたそうです。ある時、お客様が乗ってこられて、行き先を告げました。どう行くのが最短ルートか、瞬時に頭の中でシュミレートし、意気揚々と車を走らせたそうです。果たして、予定より早い所要時間で、目的地に着いたので、お客様はざぞ満足だろうと、後部座席を見たら、顔が曇っていたそうです。理由を訊くと、「どうして、この道を通ったの。この方角は、今日は鬼門だから避けたかったのに」という意外な答えでした。 その方は占いに凝っていて、普段からことさらに、方位・方角を気にしているとのことでした。笑い話のようですが、本当のことです。これなどは、冒頭の話に出た方の言葉を借りれば、『心のスキル』があれば、防げたことなのではないでしょうか。なまじ、知識としてのスキルが邪魔をして、ニーズに気づかなかったという典型的な例です。「占いに凝っているなんて、知るわけないじゃん」という声も聞こえてきます。確かに、その通りですし、極端な例かもしれません。ただし、会話の基本中の基本であることを意識すれば、回避できるのではないでしょうか。 それは、つまり『お訊すること』です。スキルがあるなら、尚更、「このようなルートもございますが、いかが致しましょう?」と、提案もできるはずです。今回のこのドライバーさんは、知識としてのスキルに溺れてしまったわけです。そのことに気づいた後、本来、持っていたスキルにプラスアルファされ、その方の能力は倍加しました。 今回のドライバーさんに限らず、プロといえる人こそ、頭でっかちになり、本当に大切なことを見失ってしまうことが、往々にしてあるようです。いくら知識があっても、人の気持ちに応えられない、人の気持ちを踏みにじる、机上の空論のようなスキルに、一体、何の意味があるでしょう。『心のスキル』とは、つまり、相手を思いやる気持ちです。もともと、目一杯、充電されている人もいますが、そうでない人、気づいた人は、充電すればよいのです。それは、つまり想像力を働かせることです。「この人、いま、○○かもしれない」「こうだったら、この人にとってベストかもしれない」などなど。必ずや、ある局面で活かされるはずです。 お客様との距離が近いタクシーの仕事は、そんな気づきの宝庫かもそれません。        

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